今日、ふと高校時代のことを思い出したので、思い出話を少し。
僕の母校は県内でも名の知れたそこそこの進学校だ。
うちの高校では
クラス替えは2年になるときのみで
2年と3年は同じクラスで過ごすことになる。
僕があの娘に恋をしたのは、その2年間だ。
こう思っていたのは自分だけかもしれないが
僕のクラスにはタイプの違う三人の美女がいた。
ひとりは、明るいギャル系美女。
いつも笑顔で、おしゃれな娘だ。
もうひとりは、スポーツウーマン系美女。
陸上部で、モデルみたいな体型をした娘。
そして、優等生系美女。
いつもおとなしくて、まじめで、肌が白い娘。
僕が恋をしたのは、優等生美女だ。
彼女はいつもおとなしくて、クラスでも目立つ存在ではなかった。
僕も、最初の半年間くらいは彼女の存在をあまり意識していなかった。
このとき、一回隣の席になったことがある。当然、意識はしていない。
あとで、どれほど後悔したか。
とにかく、目立たない子だったのだ。
そんなある日の放課後。
僕はいつものように自転車を校門まで押して帰っていた。
うちの高校では、学校の敷地内で自転車に乗るのは禁止されているからだ。
ふと前をみると、自転車を押している女の子が。
派手な色の自転車だなぁとか思いながら
彼女を追い抜くために彼女の横に。
見覚えのあるような、ないような横顔。
あ~、あの子だ。名前なんだっけ?
それが僕の彼女への第一印象だ。
そのときは、僕は急いでいたため
そのままさっさと追い抜き家に帰った。
次の日、放課後。
また同じような状況に。
次の日も、また次の日も。
こうして、僕は彼女を少し意識するようになった。
授業中、彼女が視界に入ると
しばし先生の声が聞こえなくなる。
彼女があくびでもしようもんなら、
僕の頭の中で一気に妄想はふくらむ。
彼女が先生にあてられて、問題に答えているとき
なぜか僕が緊張する。
そんな日々を続けていると、
ついに受験シーズンが到来した。
彼女はどこの大学を受けるのだろう。
そんなことをいつも考えていた。
というのも、僕は彼女の成績をしらない。
それどころか、誕生日も、血液型も、好きな食べ物も知らない。
知っているのは、
自転車の色
彼女の家の方向(家の場所は知らない)
好きなキャラクター(カバンや筆箱についているから、おそらく)
そのくらいである。
そう、僕は彼女と一度も話をしたことがない。
いや、一度だけある。
一度だけ、席が隣になったとき、
英語の授業で
この英文をどう訳すのかを隣の人と話し合って確認してくださいと言われて
ちょっとだけ僕が説明した。これだけだ。
前にも書いたが、この頃は全く彼女を意識していなかった。
前にも書いたが、後でものすごく後悔した。
過去の自分に嫉妬したのだ。
結局、自分から話をする勇気もなく、
ただ、彼女が自転車を押すのを後ろから見ていた。
今思えば、これが受験色に染まっていく学校生活で唯一の楽しみだった。
そんなときに、待ちに待ったビックイベントが到来した。
体育大会。
なぜ運動会がこんなにうれしいのかというと
うちの高校の三年生は、フォークダンスをすることが伝統なのだ。
あまりにありきたりな企画。
しかし、僕はこれがあまりにもうれしかった。
受験で忙しい合間を縫ったフォークダンスの練習。
「男子、女子に別れてクラスごとに練習をしてください。」
体育教師のこの言葉が神の言葉に聞こえた。
クラスごとにあつまる。内心テンションの上がる僕。
しかし、ここはやはり思春期の高校生たち。
みんな異性同士で手を取り合って練習というのに抵抗がある様子。
なかなか練習を開始しない。
練習開始が待ち遠しくてテンションの上がる僕。
そんななか、クラスの女子学級委員がその雰囲気を打破した。
「男女に別れて練習しようや」
マジ?
一気にテンションの下がる僕。
一人の友人が僕に近づいてきて、彼と練習をすることに。
本来なら彼女と手をつなげるはずだったのに
なんでこんなむさい男とダンスをしないといけないのか。
結局、そのまま練習一日目は終わった。
練習二日目。まだ前回のショックを引きずっている。
テンションが上がらない。
そんななか、僕の耳に飛び込んできたのは、
聞き覚えのある神の声だった。
「実際に男女に別れて音楽に合わせて踊ってみましょう。」
テンションが指数関数的に跳ね上がる。
神様は僕のことを見ていてくれた。
こうして、男女に別れて実際に踊ってみることに。
僕は平静を装いつつ、横目で彼女の位置を確認。
ほぼ僕から見て円の真向いにいる。大丈夫か?
そんな心配を抱えつつ、音楽がスタート。
他の女子たちとの接触は全く記憶にない。
とにかく、彼女までの距離だけが気がかりだった。
もう音楽も終わりに近い。
彼女までの距離は・・・微妙。
音楽よ、もうちっとふんばれ。
ついに彼女の隣へ。音楽よ、頼む。
・・・
夢はかなった。
彼女の手は、白く、小さく、ちょっと湿ってて、やわらかかった。
僕はあまりの緊張で前を見れなかった。
しかし、こんなチャンスは二度とない。
自分を奮い立たせ、思い切って顔をあげる僕。
彼女は、下を向いていた。それでもいい。
彼女と僕はいまつながっているのだ。
夢のような時間は、無情にも過ぎていく。
もうすこし!そう思ったが、願いかなわず、次の人へ。
そこで音楽は終了した。
僕の手には、彼女のぬくもりがまだ残っていた。
もう、思い残すことは何もない。
そう思っていた。
次の練習の日、あの神の言葉を聞くまでは。
「本番では、男女で手をつないで入場してもらいます。」
神、あなたって人は・・・
いままでの数秒の接触とはわけが違う。
入場門から各々の立ち位置まで、ずっと手をつなぐのだ。
時間にして、約5分くらいだろう。
彼女の存在を感じるには十分すぎる時間だ。
早速、ペア決めが始まった。
うちの高校は1組~8組まである。
どうやら、クラスで出席番号順に並んで、
1組の先頭の男子と8組の最後の女子、
1組の先頭から2番目の男子と8組の最後から二番目の女子、
・・・
という風にペアになるらしい。
僕は5組。普通に考えれば4組の女子とペアだが、
うちの高校は理系文系でクラスが分かれている。
1~3組が文系、4~8組が理系。
そして、文系は女子のほうが、理系が男子のほうが人数が多い。
もしかしたら、5組なら同じクラス同士でペアになるかもしれない。
僕の読みは的中した。
五組は同じクラスどうしでペアになる人が多かった。
男女それぞれが一列に並んで
前から二人ずつペアが組まれていく。
僕と彼女は、ほぼ隣に並んでいた。
イケる!そう思った。
目で人数を数える。
・・・
数える。
・・・
もう一回、数える。
・・・
なんど数えても同じだった。
彼女の前の人の人数と僕の前の人数。
差は・・・2。
彼女は、僕の二つ前にいた彼とペアになった。
憎い。彼が憎い。
後ろのペアが仲良さげになにか話している。
くだらない雑談。どうでもいい男子の話に、妙に反応する女子。
くだらない。そう思った。あの言葉を聞くまでは。
前の人が休んだらペアって変わってくるよね。
そうか。その手があった。
僕の前の男子が二人休めばいいのだ。
そうすれば、彼女と・・・
こうして最後の練習が終わり、
先生が前で何か話している。
最後の運動会だから楽しみましょうとかなんとか。
その日から本番まで、僕は祈り続けた。
病原菌よ、僕に力を。
そして、いよいよ本番。
その他の競技のことなど一切記憶にない。
あっという間に、フォークダンスの時間がやってきた。
かすかな希望を胸に、入場門で一人テンションが上がる。
さぁ、どうか。
病原菌は、僕に力を貸してくれなかった。
二つ前の彼が、彼女としゃべっている。
憎い。憎い。憎い。
しかし、まだフォークダンスはある。彼女は二つ前にいるのだ。
たとえ数秒でもいい。彼女と触れられるのならば。
うまくいけば、二回接触できるかも。
なんとか思考をポジティブにもっていき、
本番に臨む。
さぁ、はじまった。彼女は二つ前だ。
音楽とともに、やはりテンションが上がる僕。
練習の一度でこの恋心が満足などできようか。いや、できない。
そう思い、例の如く横目で彼女の位置を確認。
彼女は、3つ前だ。
そして、4つ前に。
・・・
無情にも、彼女は僕の希望とは逆の方に流れて行った。
神、あなたって人は・・・
一曲目はすぐにおわってしまった。
ダンスは、全部で三曲。
こうなったら、一周するのを願うしかない。
無情にも、二曲目もすぐに終了。
彼女は、横目では確認できないほどの距離にいた。
そして、最後の三局目。
無情にも時は流れていく。
彼女は、さっきよりは近づいたが、
到底、届くはずもない。
終了。
俺の青春は終わった。そう思った。あの声を聞くまでは。
アンコール、アンコール。
神は、ここでドラマを用意してくれていた。
再び回り始める人の輪。
再び近づいくる彼女。
僕は、全神経を彼女を見ることに集中していた。
もう、周りは見えていない。
他の人とのダンスなんて、記憶にない。
ただ、近づいてくる彼女だけを見ていた。
順調に近づく、近づく
・・・
突然、人の流れは止まった。音楽が終了。
僕と彼女の距離、人三人分。
完全に終わった。俺の青春。もう、終わったんだ。
そう思っていた。そのとき、僕の耳に、あの言葉が飛び込んできた。
アンコール、アンコール。
二度目のアンコール。
なんと複雑なドラマであろうか。神も人が悪い。
次こそは確実に彼女と踊れる。
そんな僕の期待を打ち砕いたのは、なんと神自身だった。
「時間の都合で、もう踊ることはできません。三年生、退場。」
神、あなたって人は・・・
神に踊らされた僕の青春ストーリー、いかがでしたでしょうか?
この続き、卒業式編は、またいつか書こうと思います。
今日は、疲れた・・・
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